【小話】ハマダさんはアラビア語圏で大人気
大学生のとき先輩から教えてもらって大笑いした話をしたいと思います。
小話に入る前に事前知識が必要なので少し解説します。
前置きが長いですが、最後のオチまで読んでいただければ幸いです。
アラビア語について
私は大学生のとき副専攻語としてアラビア語を勉強していました。
2年間勉強しましたが、ほとんど身に付きませんでした。
具体的な目標がなくモチベーションの問題はあったにせよ、アラビア語は私にとってものすごく難しい言語でした。
アラビア語の何が難しいかというと、全部です。
アラビア語の先生もこう言っていました。
「英語は最初は易しいけれども、二次関数的に難しくなっていく。それに対してアラビア語は最初からずっと難しい。」
「文字、発音、活用…各言語の難しいところを集めたような言語です。」
つまり全部難しいです。
アラビア語は子音が重要
日本語は開音節の言語です。
「紙(kami)」「橋(hashi)」「鳥(tori)」…のように、各音節に必ず母音が入ります。
母音が変わると鳥(tori)が虎(tora)になるなど全く意味が変わってしまうように、母音が重要な言語だと言えます。
(日本人は英語を話すときにも「sutudento」のように余計な母音が入ってしまうことが多いです。)
それに対してアラビア語は母音の数が少なく、子音が重要な言語です。
maktaba(図書館)という単語を文字で書く際は、
مكتبة (アルファベット表記するとmktb)
というように、子音のみを表記します。
アラビア語の語根
語根について知るとどれくらい子音が重要か分かります。
アラビア語は語根をもとに、活用させて意味を変えたり、接頭辞や接尾辞をつけて語彙を派生させていきます。
語根ktbの例を見てみます。
kitaab 本
kaatib 作家
kitaaba 書くこと
kataba 書いた
maktab 事務所
makutuub 手紙
maktaba 図書館
「ktb」は「書く」という意味を持つ語幹で、そこから単語が広がっていることが分かります。
日本人は子音への意識が強くないので、「キターブ」「マクタブ」とだけ聞くと、語根の一致になかなか気づきません。
母音が一致している「キターブ」と「ヒジャーブ」の方が近い感じがしてしまいます。
反対にアラビア語話者は子音を敏感に聞き取って意味を理解していると思います。
語根hmd
本題に入ります。
日本には「浜田」「濱田」という名字がありますが、この名前はアラビア語圏で大人気なはずです。
なぜだかわかりますか?
ハマダさんの語根は「hmd」です。
そうです、あの預言者ムハンマドと同じです!
他にもアハマドやハミードも同じ語根から派生した名前です。
並べてみます。
Muhammad
Ahmad
Hameed
Hamada
この違和感のなさ。
語根hmdは「賞賛する」という意味で、ムハンマドは「賞賛されるべき人」という意味だそうです。
「ハマダ」という名前も、ムハンマドと同じ語根を持つとても縁起の良い名前です。
お知り合いにハマダさんがいたら、ぜひ教えてあげてください。
アラブ圏で大人気に違いありません。