沢木耕太郎『深夜特急』


ゴールデンウィークは香港で彼氏と会います。めっちゃ楽しみ!!
なぜ香港かというとお互いの中間地点で、かつ航空券が安かったからです。

インドにはゴールデンウィークがないので、私は4日しか連続した休みがとれませんでした。
香港なら3泊でも十分楽しめそうだったのも理由の一つです。

有給や帰国休暇は6か月後という規定だったのですが、日本のゴールデンウィークに合わせるために入社2週間目にして規定を無視して有給を申請するという暴挙にでました。
その結果、快くお休みをいただくことができました。
会社に対する忠誠ポイントが10くらい増えました。

 

 

このような感じで決まった香港旅行ですが、香港は行ってみたかった都市の一つです。
なぜなら、沢木耕太郎氏の「深夜特急」の旅の始まりとなった都市だからです。

「深夜特急」は改めて私が説明するまでもないですが、バックパッカーの聖書です。
大学時代にインドを旅行していたとき、日本人バックパッカーが宿に残していった深夜特急を見かけることがありましたが、手にとってみることはしませんでした。
汚らしいバックパッカーがいかに安く宿に泊まれただとか、いかに多くの都市をまわっただとかいう武勇伝を語るだけのしょうもない本だと思い込んでいたのです。

 
そのままインドから帰国、そして就職し激務が始まったため読書自体から遠ざかってしまいました。
ところが一年ほど前、ツイッターで沢木耕太郎氏のインタビューが偶然流れてきたのが目に留まりました。
「歳をとってから深夜特急で行けなかった国を訪れたが、当時ほどの感動は得られなかった。」というような内容だったと思います。
 
その一言に興味を引かれ、「深夜特急」を読み始めました。
あっという間に沢木耕太郎の世界に引き込まれ、これまでこの本を遠ざけてきたことを後悔しました。
 

その土地の人との交流

旅のテーマは「デリーからロンドンまでバスで旅をする」というものです。
いわゆる観光名所を網羅しているわけではなく、筆者の個人的な思い入れや日程、お金の都合から旅程が決まっていきます。
 
そして訪れた場所を、「人」というフィルターを通して描写していきます。
もちろん街の雰囲気や自然の美しさの描写もありますが、筆者の旅のもう一つのテーマが「人」です。
 
旅行中、一つの場所で深い交流ができる人数というのはそう多くありません。
だから、彼が出会った人がその町の全てを映しているわけではないのですが、それでもその町の一部を確実に切り取っています。
その土地の人を描くことで、人だけでなく町全体の様子が生き生きと浮かび上がってくるのは、すごいなと思います。
限られた時間で限られた人間との交流を通してその町の印象が決まる、というその偶然性が旅の面白さだなあと思います。
 
 

観察眼

沢木耕太郎氏の旅行記が他のものと一線を画す理由の一つが、彼の観察眼です。
鋭い観察による解釈を加えることで、単なる旅行体験が紀行小説へと昇華されています。
 
 
たとえば、私が非常に共感したのは、彼がデリーを出発する場面です。
行動だけ追えば「安宿で数日だらだらしていたが、そろそろヤバイと思って出発した」というだけなのですが、安宿にいる無気力な若者や、あるいは自分もそうなってしまうのかもしれないという不安が生々しく描かれています。
安宿の雰囲気が完全再現されているので、経験のある人にはぜひ読んでほしいです。
私もインド東部の某都市の安宿に泊まったことがあり、観光に行くでもなく近所を散歩したり部屋で本を読んだりして数日過ごしたことがありました。
その宿には同じような生活をしている人が何人もいて、みな居心地の良さを感じているようでしたが、私はある日突然その宿を出たくなって慌てて列車を予約し逃げるようにその町を去りました。
とにかく安宿の雰囲気が嫌だと思っていましたが、そのときの私も彼と同じような不安や危機感を抱いていたのだなぁと思います。
彼の内面に対する観察も素晴らしいです。
言葉にできていなかったものを言語化してもらえた嬉しさがありました。
 

文章力

もう一つ、全体を通して「深夜特急」の魅力を支えているのが沢木氏の文章力です。
彼はさすが文章で飯を食っているだけあるな、という文章を書きます。
とても読みやすい文章ですが、 構成や語彙に拘りやセンスの良さを感じるからです。
 
たとえば、例えば一人称ひとつとっても、「旅の熱を冷ますために、俺や僕ではなく私という一人称を使った」と解説していました。(『旅する力 —— 深夜特急ノート』に書いてありました。)
 
「深夜特急」を読んで旅に出るために会社を辞めてしまった人がいるそうですが、それほど読者を熱狂させられるのは、こういった緻密な配慮があるからこそだと思います。

 

「深夜特急」を読んで思うこと

この本は旅行記として単純に楽しめるのですが、それだけでなく読んだ後も「若さ」ということについて考えさせられました。
前述のインタビューを読んだ際に、若くなければ感じられないことや得られないことがあるのだということが強く印象に残りました。
同時に、沢木氏が旅に出たのは10代から20代にかけてのことだろうと思い込んでおり、私は既にそういう感受性を失っているような気がしていました。
ところが読み始めてみると、沢木氏が会社を辞めて旅に出たのは26歳でした。
今の私のほうが若いです。
「若かったからこそ、なんでも受け入れられた。一番安くておいしい食事は、その土地の料理だ」というようなことが書いてありました。
そうか、26歳って若くて柔軟なんだ、と思い非常に勇気づけられました。
インド留学経験がありながら辛いものが苦手で、辛い物を避けて生活している自分が恥ずかしくなります。
それから、26歳という年齢が一つのターニングポイントとして心に強く刻まれました。
(ファンの方の多くはそうだと思います!)
そして26歳で会社を辞めました。と言えたらかっこいいのですが、色々あって(他記事参照)25歳で辞めました。
別に旅に出るために会社を辞めた訳ではありませんが、少しだけこの本に背中を押されたかもしれません。
 
読んだことのない方はぜひ読んでみてください。
旅に出たくなります!
  
 
私はkindleで全6巻を大人買いしました。
 
香港の話から始まっておきながら香港・マカオ編には全然触れていなかったですが、カジノの話もとても面白いです。

この記事へのコメント

  1. グルガオン在住のモノです!記事、興味深くて全部読ませてもらいました^^現地採用でも能力とやる気がありちゃんと交渉すればこんなにいい条件で働けるんだっとビックリしました!!家もめっちゃ素敵ですねー(^^♪元グルガオン現地採用の友達2人から現採時代の家の酷さを聞いてたので(笑)差にビックリです。笑

    私はすこーーーしヒンディーがわかり私のヒンディーを耳にする機会といえばうちのドライバーが門番に話してる時なのですが、確かに「アープ+命令形」で話してます!!ドライバー(ビハール州出身)が、村ではトゥムを使ってたけどグルガオンではみんなアープを使うって言ってました。ヒンディー語講座、これからも楽しみにしています(^^♪

    深夜特急、私もずっと気になりつつ同じようなイメージで手に取ることは無く30を過ぎてしまいました。笑 私は今は駐在妻でグルガオンにいますが20代のころはインド旅してたので、いろいろ共感しながら読めそう!次の一時帰国で購入しますー!

    これからもブログ楽しみにしています^^もうすぐ彼氏さんに会えるの楽しみですねー(^▽^)/

    1. あしょーかさん、コメントとても嬉しいです!
      また、記事を読んでくださりありがとうございます。
      ご友人の方、日本で働いていたときと本人の能力は変わっていないはずなのに現地採用で安く働かされると悔しいですよね。。(;_;)
      私も決して満足はしておらず給与交渉でがんばるつもりでいます。

      ヒンディー語がわからなくてもインドで生活できちゃいますが、ヒンディー語が聞き取れるとより楽しいですよね!
      やはり田舎に比べるとデリーのヒンディーはお上品なんでしょうかね??
      またヒンディーのことも書きたいと思います。

      深夜特急もぜひ読んでみてください!
      インドで旅行したことのある人なら、あるあるがたくさんあって面白いと思います。笑

      あしょーかさんのブログも読ませていただきました!
      インドで子育てされるのは大変だと思いますが、お子様が得られることも多そうですね。
      また遊びにいきます!

  2. 記事面白く読ませてもらいました!
    私も深夜特急は知ってはいましたが手に取ることはなく…ちょっと読んでみようと思います。

    彼氏さん、遠距離なのかな?という感じですが、中間地点の海外で会うなんてなんか素敵です笑
    学生の頃からのお付き合いなんでしょうか?
    Nainaさん流の遠距離継続術なんてものを記事にしてもらえたらな、と思います!
    よろしくお願いします。

    1. 読んでくださりありがとうございます!
      今日、旅行から帰って来ました。
      彼氏は前の会社で出会った人です。前の会社は辞めてしまいましたが彼氏と出会えたので入ってよかったかなと思っています。笑
      遠距離についての記事、書いてみたいと思います!

  3. はじめまして、ネットでインドで探してたら、こちらのブログに迷い込みました。
    先月インドに初めて出張しました。

    街はクラクションが鳴りっぱなし、車はところ構わず走っているし、人がワァーと湧いてきて、どこでも横断するし、とにかくパワフルな感じに、ワクワクしました!

    現地採用の日本人女性スタッフが何人か働かれていますが、皆さん生き生きとされていて何でだろうと思ってましたが、Nainaさんのブログで少し分かったような…

    投稿楽しみにしています。

    1. ブログ見つけていただきありがとうございます。励みになります。

      インドに来られたんですね! 活気があって飽きない国ですよね。
      日本にはないものがあるなぁと感じています。

      現地採用の方は(私もですが)望んで来ているので、インドのいいところも悪いところも楽しんでいると思います。
      またインドの様子が伝えられるようにブログ更新していきたいと思います。

      1. なるほど、覚悟が違うのか。
        一週間しか居ませんでしたが、活気と混沌が入り交じった雰囲気でクラクラしました。
        インド、暫くはマイブームです。
        覚悟はないですが、また行きたいです(^^;)

        1. Takyさん
          覚悟というほど立派なものではないですが、飛び込んできてしまいました。
          Takyさんもまたインドへ来るチャンスがあるといいですね。
          インドは広くて奥深い国なので来るたびに発見があって楽しいと思います!

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